はじめに
「お金を貯めなければいけない」
そう考えるようになったのは、30代後半になってからでした。それまでは、資産形成について真剣に考えていたわけではありません。
会社員として働き、給料をもらい、好きなことにお金を使う。それなりに楽しく生活していましたが、「将来どうしたいのか」「何歳まで働きたいのか」といったことを、深く考えることもありませんでした。
そんな自分の価値観が大きく変わったきっかけが、30代後半に経験したコロナ禍でした。
社会の常識や働き方が大きく変わり、それまで当たり前だと思っていた生活が、あっという間に変化していきました。そのとき、
「このまま会社に流されるだけで、自分の人生と言えるのだろうか?」
と考えるようになったのです。
そこから、本格的に資産形成を意識するようになりました。
ただ、20代からコツコツ準備してきた人と比べれば、私のスタートは決して早くありません。だからこそ私は、自分自身の目標として「55歳」という一つのマイルストーンを設定しています。
55歳で必ず会社を辞めるという意味ではありません。55歳になったとき、「もう会社を辞めてもいい」と思えるだけの経済的な土台を作っておく。そして、その時点でも仕事が楽しいなら続ければいい。逆に、働き方を変えたいと思ったなら、変えてもいい。
私が欲しいのは、仕事を辞めることそのものではなく、「自分で選べる状態」です。
そして、そのために資産形成を始めたからといって、40代の今を我慢し続けるつもりもありません。むしろ、今だからこそできることも楽しみながら、未来の選択肢を増やしていきたい。
これが、現在の私のお金に対する基本的な考え方です。
「今を楽しむ」とは、好きなだけお金を使うことではない
資産形成を始めてから、私自身のお金の使い方も変わりました。
以前の私は、趣味の釣りにかなりお金を使っていました。欲しい釣具があれば買う。新しい道具が出れば気になる。釣りに行きたければ行く。極端に言えば、「お金があれば、その分だけ趣味に使う」という感覚でした。
もちろん、その時はその時で楽しかったと思います。しかし、資産形成を本格的に考えるようになってから、少しずつお金の使い方を見直すようになりました。
今は、趣味に使うお金についても、ある程度予算を決めています。
「今年は趣味にこれくらい使う」と先に枠を決め、その中で「何にお金を使えば、一番楽しめるだろう?」と考える
制限があるからこそ、お金の使い方を考える
一見すると、「予算を決める=我慢する」ように思えるかもしれません。しかし、私自身はむしろ逆だと感じています。
使えるお金に制限がなかった頃は、欲しいものがあれば比較的簡単に買っていました。ところが、予算を決めるようになると、
- 「本当にこれが欲しいのか?」
- 「今買う必要があるのか?」
- 「同じ金額なら、別のことに使った方が楽しめないか?」
と考えるようになります。その結果、以前よりも一つ一つのお金の使い方を意識するようになりました。そして不思議なことに、使える金額をある程度制限した方が、趣味そのものを楽しめるようになったと感じています。
「たくさん使う」より「満足度の高い使い方」を考える
例えば、趣味に年間10万円使えるとします。何も考えずに使ってしまえば、細かな買い物の積み重ねで、いつの間にかなくなってしまうかもしれません。
一方で、最初に10万円という予算を決めて、
- 「今年は本当に欲しいものを一つ買おう」
- 「この道具を買う代わりに、こちらは我慢しよう」
- 「道具を買うより、実際に釣りに行く回数を増やした方が楽しめるかもしれない」
と考えれば、同じ10万円でも満足度は変わってきます。
これは釣りに限った話ではありません。ゴルフでも、旅行でも、外食でも同じです。限られた予算の中で、自分が本当に楽しめることにお金を使う。私はこれも立派な「お金の戦略」だと思っています。
「今も楽しむ」と「将来に備える」は両立できる
資産形成を始めると、「できるだけ支出を減らして、投資額を増やしたい」という気持ちが出てきます。もちろん、資産形成において入金力は重要です。
しかし、私は40代の今をすべて犠牲にしてまで、将来の資産額を最大化したいとは考えていません。なぜなら、55歳になってから「あの頃、もっと遊んでおけばよかった」と思っても、40代の時間を取り戻すことはできないからです。
だから私は、「今の人生を楽しみながら、未来の選択肢も増やす」というバランスを意識しています。
そのために大切なのが、「使えるお金を最初に決めておく」という考え方です。
- 給料が入ったら、まず将来のための投資資金を確保する(先取り投資)
- 生活費を確保する
- 趣味や遊びに使うお金もあらかじめ予算化しておく
その予算の範囲内であれば、必要以上に罪悪感を持たずに使う。この仕組みができると、「今月使いすぎたかな……」と毎回悩むことも減ります。使っていいお金を、最初から決めているからです。
資産形成の目的は「資産額を最大化すること」ではない
ここは、資産形成を考えるうえで非常に大切なポイントだと思っています。
投資を始めると、どうしても「資産をいくらまで増やすか」「何%のリターンを得られるか」という数字に意識が向きます。もちろん、それは重要です。
しかし、資産形成の最終的な目的は、資産額そのものではありません。お金を使って、自分の人生をより自由にすること。私はそう考えています。
だから、「今のお金を全部将来に回して、資産を最大化する」ことだけを目指す必要はないと思っています。今の生活に必要なお金を使い、趣味を楽しみ、経験を積む。その一方で、将来のためのお金も着実に積み上げる。そのバランスを取ることが大切です。
どうやって「未来の選択肢」を増やすのか?
「今も楽しむのは分かった。でも、それでは将来のお金はどうするの?」と思われるかもしれません。
そこで重要になるのが、仕組み化です。
「使って余ったら投資する」のではなく、「先に投資する金額を決め、残ったお金で今を楽しむ」という考え方に切り替えます。こうしておけば、毎月の相場や気分に左右されず、淡々と資産形成を続けることができます。
そして、ここで活用したいのがNISAやiDeCoといった税制優遇制度です。
| 制度 | 主な役割 | 特徴 | 活用イメージ |
| NISA | 「未来の自由」を作る | いつでも売却・現金化が可能。運用益は非課税。 | 55歳前後の働き方の選択肢を増やすためのバックアップ資金 |
| iDeCo | 「60歳以降」を支える | 掛金が全額所得控除(節税)。原則60歳まで引き出せない。 | 60歳以降の確実な老後生活を支えるための土台 |
| 現金 | 日常・緊急用 | 流動性100%。 | 日常生活費や急な支出に備えるクッション |
NISAは「未来の自由」を作るために使う
私が資産形成の中心に置いているのがNISAです。オール・カントリーなどの低コストなインデックスファンドを中心に、長期・積立で資産を作っていきます。
私にとってNISAは、単なる「老後資金」ではありません。将来、「会社を辞めたい」「働く時間を減らしたい」「少し休みたい」と思ったときに、その選択を支えてくれる資産です。つまり、NISAで作る資産は「未来の自由」のためのお金だと考えています。
iDeCoは「60歳以降」を支える資産として考える
一方、老後まで使わないお金についてはiDeCoも重要な選択肢です。掛金が所得控除の対象になり、現役時代の税負担を軽減しながら準備できます。
一つの商品にすべてを任せるのではなく、「いつ使うお金なのか」で資産を分ける。これも長期的な資産形成では重要です。
私は「インデックス+配当系商品」で投資を続けている
ここまで読むと、「NISAなら、全部インデックスファンドでいいのでは?」と思うかもしれません。
長期的な資産形成の効率だけを考えれば、低コストのインデックスファンドを中心にする方法は非常に合理的です。私自身、資産形成の中心はオール・カントリーなどのインデックス投資です。
それでも、配当を出すETF(VIG、VYM、DGRW)や投資信託(SCHD連動など)も一部保有しています。その理由は、「資産形成の効率」だけではなく、「長く続けるためのモチベーション」も大切だからです。
配当金が「投資を続ける楽しみ」になる
インデックスファンドの積立は、基本的には地味な作業の繰り返しです。
そこで配当系商品を組み込むことで、定期的に入ってくる分配金を「投資からもらえるお小遣い」として楽しむことができます。「自分のお金が少しずつ働いてくれている」という実感が得られ、「また次の分配金まで投資を続けよう」と思える。これが、私にとっては長期投資を続ける原動力になっています。
「一番効率がいい方法」と「自分が長く続けられる方法」は違う
長期投資では、数%の効率差以上に「途中でやめないこと」の方が重要です。
- インデックス投資: 資産そのものを大きく育てる
- 配当系投資: 投資を続けるための小さな楽しみ(モチベーション)にする
この組み合わせが、今の私にはしっくりきています。
55歳は「ゴール」ではなく、選択肢を持つための目安
私自身は、55歳を一つの目標にしています。ただし、55歳になったら必ず会社を辞めると決めているわけではありません。
- 完全にリタイアする: 仕事を辞めて、自由な時間を増やす。
- 働き方を変える: 週3〜4日勤務など、ストレスを抑えた働き方に変える。
- そのまま働き続ける: 仕事が楽しく、まだ働きたいのであれば、そのまま続ける。
どれを選んでもいい。これが、私が資産形成によって手に入れたいものです。
だから、読者の皆さんに「55歳で辞めましょう」と言いたいわけではありません。目標とする年齢も必要な資産額も、理想の働き方も人それぞれです。大切なのは、「自分は将来どうなっていたいのか」を考え、そのために必要なお金を逆算することです。
まとめ|「今も未来も楽しむ」
資産形成を始めたからといって、人生を楽しむことを後回しにする必要はありません。
- 使うお金には予算を決め、その範囲で最大限楽しむ(今を楽しむ)
- 未来のためのお金は、仕組みで淡々と投資する(将来に備える)
- NISAやiDeCoなどの「制度」をフル活用する
- 配当金など、投資そのものにも「小さな楽しみ」を作る
「今を我慢して未来を買う」のではなく、「今も楽しみながら、未来の選択肢を買っていく」。これが、40代になった今の私が考える、お金との付き合い方です。
「もっと早くから始めていれば」と思うことはあります。でも、過去は変えられません。だからこそ、気づいた今から始めればいい。
40代の今だからできることを楽しみながら、10年後、20年後の自分に選択肢を残していきませんか?



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